必要なのは批判的思考――西内啓氏流・データ活用人材の見極め方

シリーズ累計55万部を突破したベストセラー『統計学が最強の学問である』の著者であり、企業のデータ活用支援や分析ツール開発など、第一線で活躍する西内啓氏。難解だと思われがちな統計やデータ分析を、誰にでも理解できる言葉に“翻訳”してきた専門家でもある。
前回は、データ活用の前提となる「多角的な視点の身につけ方」について、西内啓氏に詳しく伺った。特に“抽象化・批評的思考”が、データ活用の“土台”になるという話が印象的だった。
(前回の記事はこちらから)
では実際に、データ活用に向いている人・向いていない人は何が違うのか?
組織の中で、どんな特性を持った人がデータ活用人材として伸び、どんな環境で才能が埋もれてしまうのか。
今回は、データ活用に“向いている人・向いていない人”の違い、そして鍵となる「批判的思考=ツッコミ力」の育て方と見極め方について詳しく伺った。
データ活用に向いている人とは?――鍵は“ツッコミ力”
経営者目線で、どんな人にデータ活用スキルを身につけさせるべきでしょうか?やはり前回お伺いした「抽象化・批評的思考ができる人」がデータ活用に向いているのでしょうか?
はい、その通りです。確実に持っていたほうがいいのは批判的思考です。平たい言葉で言うとツッコミ力、あるいはパンクスピリットと言っても良いでしょう。
日本の教育は“教わった通りにやるほど正しい”とされがちで、その結果「言われたことをそのまま受け入れる」癖がつき、疑問を持つ機会自体が減ってしまう。
けれど、データ分析というのは本来“改革のためのツール”。「本当にそう?」「他の可能性は?」と疑える人でなければ、本当の価値を引き出せません。
特にデータ活用に向いているのは、予想外の結果が出たときに、テンションが上がるタイプ。「おかしいな?」「なんでこうなるんだ?」「根拠は?」と自分で確かめにいけるかどうかがポイントです。
“批判的思考”は先天的なものでしょうか?後から育つものなのでしょうか?
両方あります。先天的に持っている人もいますが、環境次第で簡単に“折れてしまう”ことも多い。
例えば、小学生の理科の実験。教科書に「じゃがいもにヨウ素液をかけると紫になる=デンプンがあるから」と書いてあるとします。そこで「へぇ、そうなんだ」で終わるか、「どうやって証明したの?」「他の食材はどう?」と疑問を持てるか。
本来なら、食材を片っ端からすりおろして、条件を一つだけ変えながら比較すべきですよね。その自分で“確かめたい”という感覚が、批判的思考の芽です。
家庭でも、子どもの「なんで?」に答えて一緒に試す、安全な範囲で失敗を経験させる。こうした関わりで芽が伸びます。
社会人になると、テンションが上がる瞬間を見つけづらいですよね。
そうですね、社会に出ると、批判的思考を“隠す”人が多くなります。だからこそ、変なところで急にテンションが上がる人を見逃さないでほしい。そういう人を見つけたら、ぜひデータ活用部門にアサインして、武器としての“データ”を渡す。
批判するだけだと、ただの“指摘する人”で終わってしまいます。だからこそ、「どうすれば証明できるのか」を自分で組み立てられるよう、仮説づくりから検証、測定、解釈までの一連のプロセスをセットで身につけさせることが大切です。
誰から育てる?――データ活用を組織に根付かせる順番
例えば、100人規模の会社で、まず5人だけDX人材育成研修「DataStalize」を受けさせるなら、誰から始めるべきでしょうか?
結論から言うと、経営陣や権限のあるマネージャーなど意思決定層からです。
なぜなら、現場の分析担当者がどれだけ質の高い示唆を出したとしても、最終判断を担う経営陣やマネージャー(意思決定者)がその価値を理解できなければ、提案は採用されず、実行に移されません。
結果として、「せっかく分析しても使われない」という状況が続き、分析を担う人材が疲弊してしまう。これは、多くの企業で見られる“典型的な失敗パターン”です。
だからこそ、① 意思決定を行う経営陣・マネージャー→ ②実務を担う担当者→ ③ 各部門に1名ずつ配置という順番がスムーズです。
しかし、多くの企業からは、「そもそも経営層や意思決定層を動かすのが難しい」という悩みも聞かれます。分析の価値を実感したことがない層に、いきなりトップダウンで改革を求めるのは簡単ではありません。そうした経営層にはどのようにアプローチすればよいのでしょうか?
正直なところ、データ活用に意識が向いている人は、すでにデータ活用に向けて動いているでしょう。一方で、日頃データに触れておらず、既存のやり方にこだわりを持つ経営層を“外から説得して動かす”ことは現実的にはほぼ不可能です。
だからこそ、まずは「データ活用に興味を持っている層が、自ら参加しやすい導線」をつくることが重要です。
例えば、小さな勉強会を開いたり、簡単な分析で小さな成功体験を共有したりする。それによって「データを使うと、こんな成果が出る」という実例が社内に生まれると、徐々に周囲の関心が高まり、自然と経営層も無視できなくなります。
マネージャー育成に短期コースでも効果があるでしょうか?
十分効果があると思います。2日間の基礎パッケージのように、「データの読み方」「問いの立て方」「依頼の出し方」だけでも習得すれば、現場での問題設定のレベルが上がります。
トップがまず「データを使って判断する」という覚悟を持ち、意思決定の基準を変える。そのうえで、若手にも同じ姿勢やスキルを広げていく。この順番が、組織全体にデータ活用を根づかせるうえで最も摩擦が少なく、定着しやすい流れです。
データ活用の本質は“正しく疑う力”にある
データ活用で最も大切なのは、“正しく疑う力”を持つことです。言われた通りに分析するのではなく、「なぜ?」「本当にそうか?」と問い直せる人こそ、組織に新しい発見をもたらします。
こうした思考は、一部の専門職だけのものではありません。現場からマネジメント層まで広げてこそ、組織全体の力になります。
定量的に考える文化を育て、批判的思考を実践へと変える―
その第一歩として、DataStalizeをぜひご活用ください。
